15年1月相続税改正、都心部に一戸建てを持つ人は要注意?
(こちらより引用)
相続税と聞くと、資産が数億円ぐらいなければ関係ないと思う人が多いかもしれないが、2015年1月からの税制改正によって〝他人事“でなくなる可能性が出てきた。特に都心部で一戸建てを所有し、金融資産がある人は課税対象になるリスクが高くなる。15年1月からの相続税改正のポイントと節税対策を紹介しよう。
基礎控除額の大幅減額で課税対象の割合が拡大する
相続税改正の最大のポイントは、基礎控除額が大幅に減額されること。現行の基礎控除額は「定額控除5000万円+法定相続人控除1000万円×法定相続人数」だったのが、改正後は「定額控除3000万円+法定相続人控除600万円×法定相続人数」まで減るのだ。
法定相続人とは被相続人の相続する権利がある人のことを言い、一般的には配偶者や子どもなどが相当するが、
今回の改正により、例えば、法定相続人が2人の場合、今までは土地や金融資産など合わせた遺産総額が7000万円(=5000万円+1000万円×2人)までは非課税だったのが、改正後は4200万円(=3000万円+600万円×2人)まで縮小されてしまう。
2010年に相続税の課税対象となった被相続人の割合は全国で約4%にすぎなかったが、今回の改正で10%まで増えるとの試算も出ている。特に地価の高い東京23区では2010年で課税対象となる割合は約9%、さらに都心部の港区や渋谷区などでは2割前後に及んでいることから、改正後はさらに多くの人が課税対象になることが容易に想像できる。
大半の人に関係ないと思われているがその他の改正項目として、相続財産額(法定相続分に基づく取得金額)が2億円~3億円が40%から45%にアップ、6億円超の場合は50%から55%まで増える。
相続税額の計算は、大まかに言うと、(1)課税遺産総額を求める(相続税の対象となる遺産―基礎控除)、(2)求めた課税遺産総額を法定相続分で各人に分ける、(3)それぞれの税額を計算(相続財産額×税率―控除額)で求められる。しかし、実際の計算は複雑かつケースバイケースなので専門家に頼むか、専門書を購入して早見表のようなものを参照するのがおすすめだ。
相続税対策として、二世帯住宅や賃貸併用住宅が有効
納税が義務であることは承知しているが、納めないでいい税金は納めたくないというのが正直なところ。そんな人に相続税対策を紹介する。
まず、金額面で強力な対策の1つは、実家に親と同居して二世帯住宅を建築し、「小規模宅地の評価減の特例」の対象となること。適用されれば、居住用宅地330㎡(改正後)までなら評価額を80%減額できる。例えば、土地の評価額が1億円なら2000万円まで減額できる。ただ、2010年から配偶者以外は原則同居していないと減額が認められないなど適用条件が厳しくなっているので要注意だ。
次に多いのが、保有する土地に賃貸アパートなどを建てて運営したり、実家を二世帯住宅かつ賃貸併用住宅にすること。賃貸物件が建つ土地は「貸家建付地」の扱いになり、賃貸併用住宅の土地評価額は、建物の自宅部分(借地権)と賃貸部分(借家権)の面積比に応じてあん分する。
建物評価額は固定資産税評価額と借家権控除で算出。新築評価額の70%程度まで減額できるので、課税遺産総額は大幅に減らせるため、最もオーソドックスな節税対策と言える。
一般的にできるのは生前贈与だ。これは年間110万円までなら、誰に贈与しても非課税になる制度を利用するもので、長期間行えば節税効果は高い。ただ、これも子どもから親に頼むのは気がひけるなどの理由で計画的に行えない場合が多い。そんな中、最近は孫への教育資金として1人当たり1500万円まで非課税になる制度を利用するなどが人気だ。
いずれにせよ、15年1月の改正で良くも悪くも相続税は今より〝身近”になる。都心に一戸建てを持っていて課税対象となってしまったが、現金がなくて相続税を納められず、大切な住まいを売却するハメに陥らないためにも、相続税の知識を持っておく必要があると言えそうだ。
不動産の所有者とって相続税は他人事でなくなる。今から知識を持って自衛を。詳しくは、国税庁のホームページで確認しよう。
この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。