遺言に関する3つのよくある「勘違い」
日本公証人連合会によると、公正証書遺言の作成件数は、2013年には9万6020件あり、25年前の2倍以上になっています。また、経済産業省の2012年の調査では、遺言を作成したいと考えている人は3割を超えており、年齢が高いほどその意向は強まっています。
このように遺言への関心は年々高まっていますが、遺言について肝心なことを勘違いしている方も多いようです。遺言に関するよくある勘違いに、次の3つがあります。
勘違い1>> 「遺言は一生に一度だけ書くもの」
第1に、「遺言は一生に一度だけ書くもの」と思っている方が多いのですが、そんなことはありません。遺書は死ぬ間際に書くものですが、遺言は何度書いてもよいのです。
遺言は法律行為ですので、認知症になり意思能力がなくなってしまったら、もうつくることはできません。認知症にならないまでも、病気になってしまうと、病気と闘うことで精いっぱいで遺言どころではなくなってしまいます。
「まだ元気だから遺言など早い」のではなく、「元気だからこそつくれるのが遺言」なのです。つくったあとで家族の状況や財産の状態が変わったら、何度でもつくればよいのです。「そのうちに…」と思っているうちに、死が迫ったときにはもうつくれなくなってしまいます。
勘違い2>> 「遺言は誰にも見せてはいけない」
第2に、「遺言は誰にも見せてはいけないもの」と思っている方が多いようです。ドラマなどで本人の死後に遺言を公開するイメージがあるのでしょうか。しかし私は、遺言をつくったら、家族全員を集めてご自分の口から「このような遺言をつくったからどうかこのとおりにしてほしい」と伝えることをお勧めします。
なぜならば、せっかく遺言があったのに、その内容に不満のある相続人がいて揉めてしまう家族が多いからなのです。もし生前に父母から直接に「こうしてほしい」ということを家族全員で聞いていれば、死後に遺言の内容をめぐり揉めることは少ないと思います。「遺言さえつくっておけば揉めない」のではなく、あなたの意思がきちんと家族に伝わることが重要なのです。
勘違い3>> 「遺言にはよけいなことを書いてはいけない」
第3に、「遺言にはよけいなことを書いてはいけない」と思っている方がほとんどだと思いますが、実は、遺言には何を書いてもよいのです。遺言は法的な文書ですから、「誰に何を相続させる」というように、必要なことだけを簡潔に書かなければならないとお思いかもしれません。しかし、必要なことがきちんと書いてあれば、あとは好きなことを書いてもいいのです。
遺言には「付言」として自由に言葉を添えることができます。特に、なぜそのような遺言の内容にしたのかという財産分けの理由や、家族への感謝の気持ちを付言として記しておくことは、あなたの意思を家族に伝える上でも非常に大切です。そのほか、俳句や和歌、好きな言葉を書いてもいいし、川柳で笑わせていただいても結構です。これまでの人生を振り返り「私の人生の10大ニュース」として発表してもOKです。ただし、愚痴や悪口はNGですよ。
上記記事、こちらより引用
この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。