2015年の相続増税より本当に怖い話
2015年1月1日から相続税が増税になる。
たとえば、相続財産から非課税にできる基礎控除の額は、現状の8000万円から4800万円に引き下がる。都心のマンションと、数千万円の金融資産があればすぐに超えてしまいそうな額だ。税率も上がり、最高税率は50%から55%へ拡大、資産家はまさに「半分以上を国に持って行かれる」時代になった。
土地にかかる税額を算定する基準となるのが、年に1回公表される「路線価」。今年も7月1日に公表されたが、都心部などで軒並み昨年より上昇している。この結果、相続税の課税対象者がぐっと増加する見通しになっている。
税理士法人レガシィの試算では、両親の片方が亡くなった後、残された親もなくなった時の相続(二次相続)について、約2000万円の金融資産と一軒家(50坪弱)、その他資産200万円弱の財産に対して、来年以降新たに相続税が課税される住宅地が近くにある駅が、首都圏でも郊外へ広がった。
主要な駅では、東京都なら高尾駅(JR中央線)、神奈川県の小田原駅(JR東海道線)、千葉県の蘇我駅(JR京葉線)、埼玉県の上尾駅(JR高崎線)のあたりまで、課税のアミがかかってしまうことになる。
<<問題は母の相続(二次相続)>>
ここで二次相続と書いたが、一次相続の場合は課税とならないことが多い。なぜなら、残された配偶者には別途、相続税の控除があるからだ。相続財産全体の半分か、1億6000万円のうち大きいほうの金額までは、非課税となる。遺産が自宅の場合は小規模宅地特例など、ほかの税優遇もある。
親世代の日本の夫婦は男性が年上であることが多く、また男性の平均寿命のほうが女性より短いことから、一次相続は「父の相続」となることが多い。残された母の生活を守るため、子も母に多めの財産が配分されることにあまり文句を言わない。
ただ、実はここに落とし穴がある。母の相続(二次相続)と父の相続の間には、平均で13年以上のタイムラグがあるのだ(税理士法人レガシィ調べ)。
子は結婚し、自分たちの家族を持ち、家を出て別の自宅を所有している場合が多い。配偶者への控除はもちろん、小規模宅地の特例(評価額を8割減らせる)も使えなくなる。そもそも母の自宅は経年劣化しており、地方の一軒家では買い手もつきづらい。年金生活で金融資産も食い潰してしまっているかもしれない。子に兄弟姉妹がいれば、遺産分割を巡る争いになり、相続転じて「争続」となりかねないのだ。
<<肝心なのは「親子の会話」>>
親子の間で相続の話をすることは少ないだろう。そもそも互いが成人していれば、自分の人生観や将来像について、語り合うことすらあまりないのではないだろうか。
親は子に、葬儀や相続のことで迷惑をかけたくない、先祖代々続くお墓を守っていってほしい、と切に願う。そこで怪しげな不動産投資をしてしまったり、不透明な業者と任意後見人の生前契約を結んだり、仕組み債などの複雑な金融商品を子の知らぬうちに購入してしまう。
子は親に、遺産は多くなくていいから兄弟姉妹で分けやすくしてほしい、とにかく「争続」にならないようにしてほしい、と考えている。だが、互いの興味関心すら知らないまま、親の死亡を迎えてしまう。
子は葬儀にてんてこ舞いし、相続で手間をとられる。思わぬ巨額の相続課税があるかもしれないし、不採算物件になってしまった地方のペンシルビルを相続する羽目になるかもしれない。
当たり前の話だが、「遺言書を書いてくれ」「嫌だよ、そんなもの」といったタブーにいきなり切り込む話をしているのではない。「もし認知症になったら、この家はどう管理する?」と、素直に本音で話せる話題から持ち出せばいいのではないか。
父(母)が死んで一次相続をしたずっと後に訪れる二次相続を考えるには、両親の生前からどう準備するかが前提を大きく左右するのである。そろそろお盆休みの時期、「我が家の財産をどう守っていくのか」について、腹を割って話し合ってみてもいいかもしれない。
記事引用(http://toyokeizai.net/articles/-/44244)
この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。