詳細な内容を記載したワープロ作成の遺言書と汚いカーボン複写の遺言書はどっちが有効か?
Q.
Xさんは、自らの死期が近いことを思い、遺言を作成しました。1つは、原稿用紙10枚分にわたる詳細な内容で、さすがに手書きはしんどいし、正確に記載しなければならないと考えワープロで作成しました。こちらは署名もワープロで打ち、印鑑を押しました。
もう1つはかんたんに要点をまとめたものです。こちらは、自分で保管したいと考えたために、複写式のカーボン紙に記載し、写し取られた方(コピー)に押印をしました。なお、いずれも日付は入っています。
さて、この2通の遺言書のうち、いずれが有効でしょうか?
(1)内容も詳細なものだし、ワープロで作成した方が有効
(2)自筆で書かれたものに近いので、カーボン複写の方が有効
A.
正解(2)カーボン複写の方が有効
民法968条1項では、遺言を残す人がみずから遺言書を作成する自筆証書遺言の場合、「遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定めています。
ポイントは自書です。簡単に言えば自らが筆を取って書かなければならないということです。とすれば、設問のワープロ打ちの方は明らかに自書でないので無効となります。
さて、問題はカーボン複写式で作成され、複写の方に押印をしている後者は有効となるかどうかです。この点、裁判例においては、「カーボン紙を用いることも自書の方法として許されないものではないから、本件遺言書は、民法九968条1項の自書の要件に欠けるところはない」(最高裁平成5年10月19日)とされています。当該条文は、「本当にその人が遺言を作成したかどうかを確認するためには『筆跡』が重要だ」という意図の下、設けられたものとされています。カーボン複写の場合、その筆跡を見れば、作成者が誰かは判別可能であるから自筆とみて差し支えないと判断されたのです。
記事引用元(http://www.hou-nattoku.com/quiz/0838.php)
この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。