相続対策で「財産の寄付」!? 財産を社会に還元する仕組み
<<相続対策で財産の寄付とは>>
皆さんは、富裕層の方が相続対策で財産の寄付をするといったことを耳にされたことはありますか。「えっ、そんなことができるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。相続によって取得した財産を、国や地方公共団体又は特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄付した場合や、特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合には、その寄付した相続財産を相続税の計算対象から除外できるという特例があります。その特例を利用することによって相続税を軽減することができるのです。それでは以下で、もう少し詳しくこれら2つの財産を社会に還元する仕組みを見ていきたいと思います。
<<財産を社会に還元する仕組み(1)>>
国や地方公共団体又は特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄付した場合の特例を受けるには、以下の3つの要件すべてが当てはまらなければなりません。
1.寄付した財産は、相続や遺贈によって取得した財産であること。相続や遺贈で取得したとみなされる生命保険や退職手当金も含まれます。
2.相続財産を相続税の申告書の提出期限までに寄附すること。
3.寄付した先が国や地方公共団体又は教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる特定の公益を目的とする事業を行う特定公益法人であること。
これら3つの要件を満たして始めて財産が国、地方公共団体や特定公益法人に移り、これらの主体を通して社会へ還元されていきます。国や地方公共団体がどのような役割を担っているかは明らかだと思います。
しかし、特定公益法人と言われるとピンと来ない方が多いと思います。特定公益法人の例を挙げますと、公益財団法人セーブ・ザ・チルドレン、公益財団法人がん研究会、財団法人日本ユニセフ協会、日本赤十字社、特定非営利活動法人国連UNHCR協会、グリーンピース、チャイルド・ファンド・ジャパン、財団法人日本フォスター・プラン協会などがあります。こうした具体的な公益法人名を見て頂けると、その役割がご理解頂けるのではないでしょうか。
<<財産を社会に還元する仕組み(2)>>
相続や遺贈によって取得した金銭を特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合の特例を受けるには、以下の3つの要件すべてが当てはまらなければなりません。
1.支出した金銭は相続や遺贈で取得したものであること。
(相続や遺贈で取得したとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます)
2.その金銭を相続税の申告書の提出期限までに支出すること。
3.その公益信託が教育や科学の振興に貢献することが著しいと認められる一定のものであること。
これら3つの要件が満たされて始めて支出された金銭が信託銀行等に信託されます。そして、信託銀行等が公益目的に従いその財産を管理・運用し社会に還元していきます。公益信託では、以下のような公益事業を行うことが出来ます。奨学金支給、自然科学研究助成、教育振興、国際協力・国際交流促進、社会福祉、芸術・文化振興、都市環境の整備・保全、自然環境の保全、人文科学研究助成、文化財の保存・活用、動植物の保護繁殖、緑化促進。そして、委託者の趣旨に合わせてオーダーメイドの公益信託の設定が可能となっています。
<<2015年の相続税改正を前にして>>
2015年の1月1日より相続税が改正されます。この改正で重要なのは、基礎控除額が4割減らされることです。それにより今まで関係ないと思われていた方でさえも、相続税を支払う可能性が非常に高まります。その数は今の4〜5倍、人によっては10倍に増えるとも言われています。相続税の申告書の提出期限は、相続の開始があったことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡日)の翌日から10ヶ月目の日となっています。10ヶ月は、時間がありそうに感じますが煩雑な手続きや様々な書類等を揃えたりしなければなりませんのであっという間に期限を迎えてしまいます。ですから、遺贈もしくは相続の可能性が少しでもありそうと思われる方は、寄付するとしたらどのように寄付したいか等を事前に調べておいたほうがよさそうです。
<<相続対策による富の再分配>>
日本は財政赤字という大きな問題を抱えております。こうした問題下では、かつて政府主導、地域主導で行われていた慈善活動にどうしても資金的制限が出てきます。それを補うものとして、寄付金は非常に大きな役割を果たすと思います。しかし、日本ではまだ寄付文化が定着しておりません。ただ、それは寄付するきっかけや寄付リテラシーが欠けているだけで、寄付をしたくない訳ではないと思います。その証拠として東日本大震災の時には、ものすごい金額の寄付が集まりました。
相続税対策という理由で、財産を社会に還元し富の再分配が行われることに対して疑問を感じる方もいらっしゃると思います。しかし、相続税対策というきっかけからでも、被相続人や相続人が寄付する大切や意味を学び、周りの人もその重要性に気付かされ寄付リテラしーを高めていく。そして、最終的にその財産が社会に再分配できるのであれば、それは立派な寄付行為だと思います。
記事引用元 (http://zuuonline.com/archives/17150)
この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。