財産が家と敷地のみ 他の相続人と「代償分割」も
亡くなった人の主な財産は、住んでいた家とその敷地だけ-。そんなケースでは、相続トラブルになりやすい。家や土地を相続して住む人はいいが、他の相続人が十分な遺産をもらえるとは限らないからだ。どんな対処法があるのだろうか。 (白井康彦)
名古屋市を拠点に活動するファイナンシャルプランナー(FP)の二村猛(ふたむらたけし)さん(46)は約十年前、父方の祖母が死去したときの相続で頭を痛めた。二村さんは妻子や母、祖母と一軒家に同居。敷地の名義は二村さんと母。建物の名義は二村さん、母、祖母だった。
祖父は既に亡く、法定相続人は、おば二人と父。父も既に死去しており、二村さんと姉、妹は法定相続人の代わりになる「代襲(だいしゅう)相続人」となった。おば二人の法定相続分は三分の一ずつ、二村さんや姉、妹はそれぞれ九分の一だ=図。
しかし、建物の祖母の持ち分をおばや姉、妹が相続すると、引っ越しを迫られる可能性が出てくる。そこで二村さんは、祖母の持ち分を二村さんが引き継ぐことなどを内容とする遺産分割協議案をまとめ、おば二人は納得してくれた。「人間関係が悪くなかったことが、幸いしました」と二村さん。おば二人に数十万円ずつを渡したという。
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兄弟でケーキを平等に分けようと思ったら、ナイフで二等分すればいい。しかし、主な相続財産が家とその敷地だけの場合は分けられない。相続人らが法定相続分を主張すると、円満な相続はどうにも難しいのだ。主な対処法は三つある。
一つ目は相続対象になっている不動産の共有。持ち分を三分の一ずつなどと均等に分けられる。だが、相続問題に詳しい法律家やFPらは「お勧めできない」と口をそろえる。以前、不動産業界にいた二村さんも共有状態の不動産の扱いにくさを、「現状と違う利用をするときも、売ろうとするときも共有名義人での調整が必要」と説明する。
二つ目は対象の不動産を売り、その金銭を分配する方法だ。法定相続分通りには分けられるが、そこに住みたいと考える法定相続人には、つらい選択だ。
三つ目は「代償分割」という現実的な妥協策。不動産の相続人が、相続しない人に、その人の権利分の金額を出すという考えだ。兄弟二人だけの遺産分けで、兄が二千万円の不動産を相続するときは、弟に一千万円を支払う。ただ、現実にはこの代償金を用意できない場合が多い。
相続に詳しいFPで、杉浦経営会計事務所(愛知県稲沢市)相続相談室長の橋本玄也(げんや)さんは「墓を誰が守るか、親の介護は誰がしていたかなども相続人らで考え、現実的には自宅を相続する人が、他の相続人にお願いするしかない」と助言する。
親が生前にできる限りの対策をしておくことも大事だ。
FPらが勧める手法の一つが生命保険の活用。生命保険に加入し、死後の保険金受取人を自宅を相続する子にしておく。子がその保険金を代償金に充てる要領だ。ただ、高齢での加入は保険料が高いなどの難点があるので、この手段を選ぶ場合は、なるべく早く実行するのがよさそうだ。
記事引用元(http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2014092502000196.html)
この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。