借金の相続と相続放棄の注意点
大阪相続遺言相談センターです。先日まで暑い暑いとつぶやいていたら、すっかり涼しくなってしまいました。
「コロナ対策」、「熱中症対策」に加えて、「大雨・台風対策」も必要な時期となりました。大阪相続遺言相談センターでは、将来の相続に備えた「生前対策」のご相談が増えています。
「相続の生前対策」は、本当に人によってさまざまです。同じような境遇の方でも「どのようなことを望んでいるか」によって対策は変わります。「生前対策」のご相談で一番大切なことは、「しっかりお話をお伺いする」この一点につきます。
「何をどうすればいいのか?」という疑問であたまがいっぱいの方もぜひ無料相談をご利用ください。
私たちは、相続の相談にこられた方が「何をどうしたいのか」という視点から、一緒に答えを見つけていきます。
「どの専門家に相談すればよいかわからない」と思われる方もぜひ無料相続相談にお越しください。相談内容を一緒に整理させていただき、必要な場合は協力先の専門家をご紹介いたします。
本題へ
今日の解決事例は、「相続放棄をすべきかどうか」についてのご相談事例です。
一人暮らしをしていた父親が突然亡くなってしまったという一人娘のAさん。たくさん書類を抱えてご相談にこられました。
Aさまのご相談内容
「私は20年前に結婚して家を出てからは父と離れて暮らしていました。父と会うのは年に2回会えればいいほうで、お正月やお盆くらいでした。今回元気だった父が病気で急に亡くなりました。葬儀を済ませて借家の荷物を片付けていたところ、「請求書」や「督促状」がいくつか出てきたのです。
家にあった通帳を見たら600万円くらい残高はあったので、今ある請求書の支払いを全部してもまだお金が残るくらいなのですが、他にもまだ知らない借金があったらと思うと心配で心配で。。。一つでもお支払いをすれば、もう相続放棄をすることができなくなるのですよね?
父は亡くなってしまったので、何がどうなっているかもう聞くことはできないし、いったいどうしたらいいのでしょうか。」
相続人として取りうる方法
このような場合、相続人としてとりうる方法は大きく分けて次のパターンになります。
①何も調査せずに、死亡後3か月以内にすぐに家庭裁判所で相続放棄の手続きをとる。
②相続放棄するかどうかを検討するため、財産調査と債務調査をする。
③調査したうえでも不安があるなら、相続人全員で限定承認を申し立てる。
Aさんの場合は、とにかく残された書類から判断するしかありません。
まずは請求書と督促状の確認
とりあえずAさんから請求書と督促状を見せていただきました。
「請求書」は消費者金融からのもので、「督促状」は債権回収会社から委任を受けた弁護士からのものでした。
通帳の履歴の確認
次に通帳の履歴を確認しました。通帳の履歴は貴重な情報源です。
今回のAさんのように、亡くなった方の相続財産や負債がまったく解らない場合、生前のお金の動きがわかる通帳の履歴は大きなヒントになります。
通帳の履歴には、定期的に貸金業者と思われる法人あてへの振り込みが2件ほどありました。あとはデビットカードの引き落としと、公共料金の引き落としでした。コロナの給付金と思われる入金もありました。
弁護士事務所への定期的な振込から借金をたどる
私はAさんへ質問しました。
「通帳の履歴を見る限りでは、クレジットカードや消費者金融の引き落としはなさそうです。デビットカードの利用があるところをみるとクレジットカードを持っていなかったのではないでしょうか?」
するとAさんは次のように答えました。
「昨年だったでしょうか。父から『弁護士に頼んで借金を整理している』というような話を聞いた記憶があります。もともと自営業をしていましたが一時期体を悪くして働くことができない時期があって、支払いに困ることがあったようです。その時は、さほど深刻なようには思えなかったので、詳しく根掘り葉掘り私から聞くことはなかったのですが、、、その時しっかり聞いておけばよかったですね。
あと、書類の中にATMの振込伝票がありました。弁護士事務所へ定期的に振り込んでいたみたいですが、口座名が長くて肝心の弁護士事務所名が頭文字二文字しかわからず見当もつかないし、このお金がいったい何の振込なのかもわかりません。」
ATMからの振込伝票を見せていただくと確かにそのとおりで『アズカリキン ベンゴシホウジン〇〇』と表示されていますが、これだけでは弁護士事務所名が特定できない状態でした。そこでふと思いついた私は、スマホのネットバンキングで伝票に表示されていた口座番号を入力してみました。すると、振込先の口座名義人としてとある弁護士事務所名が表示されました。そこでAさんに次のようにご提案しました。
「この弁護士事務所は、T市にある弁護士法人のようです。ネットで検索すると電話番号がわかりますので、一度お父様のお名前を伝えて、お父様が依頼者でなかったかどうかを確認してみてください。この事務所が、お父様が借金の整理を依頼した事務所だとしたら、相続人であるAさんには、何らかの情報は教えていただけると思います。もし、それでも情報が得られないときは、当事務所のほうで財産調査のサポートをさせていただきます。」
その日は日曜日でしたので、Aさんは「では明日弁護士事務所にかけてみます」とおっしゃってお帰りになられました。帰られるときも本当に不安そうで、ため息を何度もついていらっしゃいました。
翌日A さんからご報告がありました。弁護士事務所に問い合わせた結果、やはりお父様はこの事務所に借金の整理の依頼をしていたようです。
「おかげさまで気になっていた事が全部わかりました。借金については、一部を残してほとんど解決していたようです。残りの借金も額はたいしたことが無さそうでしたので、このまま預金からお支払いして終わることができそうです。ありがとうございました。」
気になる借金のことが無事に解決してほんとうにほっとされたようです。
今回のAさんのように、相続した借金のことすべてがわかるパターンは少ないように思います。借金のことはたとえ身内でも隠しておきたいものです。でも、相続人にとっては借金があるかないかは、相続するかどうかを判断するうえで重大な関心事です。にもかかわらず、死亡された方に借金があるかないかについて、ある程度調査することは可能ですが、そのすべてを把握することは困難です。
Aさんにとって、お父様が生前に借金の整理をしていたことは非常に幸運でした。
相続放棄に関する注意点
借金の相続に関して、「相続放棄」という言葉をよく耳にします。相続は貯金などのプラス財産だけでなく、借金などのマイナス財産も相続の対象となります。
被相続人が多額の借金を抱えたまま亡くなり、自身が相続人になった場合、その借金を引き継いで支払わなくていいように、相続放棄という手段が与えられています。
今回は相続放棄に関して注意点を3点お伝えしようと思います。
相続放棄に関する注意点その1
→相続放棄した借金は、相続人の第2位順位に引き継がれる
例えば、借金がある夫の相続放棄を妻と子どもがした場合、その借金はただちに消滅するわけではありません。もし、夫の両親が生きている場合、妻と子どもの相続放棄によって、夫の両親に相続権が移り、両親が負債を相続することになるのです。
したがって、相続放棄することを事前に相続人の第2位順位(この場合は夫の両親)に伝えておかないと、突然債権者からの督促状が届くなど親族トラブルに発展する危険性があります。
相続放棄に関する注意点その2
→相続放棄をすれば相続財産を一切相続できない
相続放棄とは、法律上で相続人の対象ではなくなるということです。したがって、相続財産にプラスの財産があった場合にも一切相続することはできません。
よくあるのが、「田舎の山林や土地はいらないので放棄したいです」というご相談です。相続放棄で「一部の財産だけ放棄する」といったことは認められていません。
相続放棄ができる期限として3ヶ月間の猶予しかありませんので、急いで相続財産(遺産)の調査をしっかりとやらなければいけません。3か月では調査が間に合わない場合は、家庭裁判所に申し立てることにより、熟慮期間を延長する方法があります(民法915条)。
相続放棄に関する注意点その3
→相続放棄の撤回は原則できない
例えば、借金などの負債があるため相続放棄したものの、負債を上回るような高額な相続財産があったことを後で知り、それを相続したいからという理由では、相続放棄を撤回することは原則認められません。「相続放棄する段階では知らなかった」というのは原則として放棄撤回の理由になりません。
よく調べないまま安易に相続をするか放棄をするかを選択することは、思わぬトラブルを生じさせてしまうかもしれません。相続に関して、日頃から家族同士で話し合い、もし不安や疑問が生じた場合は、大阪相続遺言相談センターの無料相談をお勧めします。
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この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。