空家の所有者は10年前に他界。そこに住み続けている長男。転勤になったので売りたいなあ。このままで売れる?
第8話~代償分割とは?
大阪相続遺言相談センターです。
第7話では、空家(不動産)を相続するにあたり、「代償分割」という方法があることを述べました。
すでに遺産分割協議書案を作成していましたが(以前の第5話をご覧ください)その協議書にも手直しが必要になります。
実務上よくとられる手法であるこの「代償分割」、いったいどんな方法なのでしょうか?
<サポートその1~代償分割で気を付けるべきことがある>
「代償分割」とは、
「遺産の分割にあたって、共同相続人などのうちの1人または数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が、他の共同相続人などに対して債務を負担するもの」を言います。(平成30年11月8日閲覧 国税庁ホームページNO4173より)
もっとわかりやすく言えば、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)の結果、法律上きまった相続分(法定相続分)より多く遺産を取得した相続人が他の相続人に対して、多くもらいすぎた分を代償金として現金等で支払うことです。
つまり、今回のケースでは空家をAさんだけの名義にする、つまりAさんは法律上決まった取り分よりも明らかに多くもらうので、そのかわりにEさんは「貰えなかった相続分について、お金をください」と主張しているのです。
不動産は、法律上の相続分で共有で相続することはもちろん可能です。
ただし、実務上は共有状態になることはあまりお勧めできません。なぜなら、その後の不動産の管理・処分のときには、共有者全員の合意が必要となるからです。一人でも、反対する人がいれば、何もできない不動産となってします可能性があります。
なので、代償分割という方法は、不動産を単独で相続するかわりに、他の相続人に対してはお金等で支払うことで共有状態を避けることができる点では効果的です。
代償分割では、気を付けていただきたい点があります。
それは、遺産分割協議書の書き方です。遺産分割協議書には、『代償分割として』『だれからだれへ』『いくら支払うのか』、『いつ支払うのか』をそれぞれ明確に書いておく必要があります。
例えば、『代償として支払う』旨が書かれていないと、何に基づく金銭のやりとりかが解らず、税務署から『贈与』であると指摘を受けてしまう可能性があります。
下記は、遺産分割協議書の代償分割の記載例です。
※ただし、あくまで一例ですので、全ての場合にあてはまるとは限りません。
上記の不動産につき、相続人 A が取得、相続登記をし、これを売却した後、その売却代金につき、相続人 E に●分の1の割合で代償金を支払う。なお、上記不動産の売却及び売却後にかかるすべての実費などの諸費用、税金等(不動産売却による所得税含む)は、相続人 E が2分の1の割合で負担する。
代償金の支払い時期は、不動産売却後及び諸経費等の額が確定した後とする。
Aさんが相続人であるEさんと直接連絡をとり、「代償金」としていくら支払うのか、無事に話し合いで決まったようです。
このあとスムーズに手続きが進んだのでしょうか。続きは次回のお楽しみに
この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。