民法(相続法)改正(2018年7月6日成立)について6 ~遺留分(いりゅうぶん)制度が変わる!具体例を挙げて説明します~
大阪相続遺言相談センターです。
前回は、相続関連法改正の3つ目の「遺留分の制度見直し」について、法務省のホームページから引用した文言でお伝えしました。
これは2019年7月1日に施行される変更点です。
今回は、法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html)の該当部分を引用しながら、次のように例をあげて説明します。
なお、遺留分とはなにか、減殺請求とは何かについては、前回のコラムをご覧くださいね。
一代で財産を築きあげた会社経営者のAさんは、所有する財産のうち、その会社の事業に必要なビル(評価額1億1123万円)を長男へ、預貯金1234万円5678円は長女にという遺言を残し死亡しました。
非常に評価の高いビルが長男にわたり、それに比べて低い金額の預貯金しかもらえないことに不満な長女。
Aさんの相続人は長男と長女のみです。
法律上、長女には2分の1の法定相続分があるのに、遺言があるせいでこれだけなのかと長女は憤慨しました。
そこで長女は、長男に対し、遺留分減殺請求権(遺留分を確保するために、多めに財産をもらった相手に対して、自身のが遺留分を請求すること)を行使しました。
改正前の法律では、この「行使」をすることによってただちに、長女の遺留分相当額に応じて、長男が取得するとした不動産について、持分を長女が取得することになっており、行使したことによりビルが当然に共有になります。
つまり、ここでは、
ビルは1億1,123万円分の9268万1758円が長男
1億1,123万円分の1854万8242円が長女
という持分での共有状態になりました。
共有になってしまうと、ビルの処分、管理は共有者全員でしなければなりません。
このように不動産が共有になると、Aさんがビルを長男へ渡して事業を承継させたい思いで遺言書をのこした気持ち通りになりません。
そこで今回の改正では、長女が長男に遺留分を請求した場合、不動産が当然に共有となるのではなく、長女が長男に「金銭債権」、つまり、長女が長男に「お金を払ってくれ」といえる権利を持つことになり、長男はお金を長女へ支払えばいいことになりました。
そして、もし長男がそのような金銭をすぐに用意できないのであれば、長男が裁判所へ請求することにより、その金銭支払い債務の全部もしくは一部の支払いに相当の期限を許与してもらえる、つまり支払いをちょっと待ってもらえる制度もできました。(新民法1042条~1049条)
付け加えですが、Aさんがもし相続人のうちだれかに、生きている間に贈与していた場合、それを遺留分の対象としてほかの相続人が遺留分を減殺請求、つまり「被相続人があなたに財産をあげたせいで相続財産が減ったのだから、少し返せ」と請求した場合、法律改正前までは、相続開始前にしたものすべてがその「返せ」と言える対象になっていましたが、法改正により相続開始前の10年前までのものだけに限定されました。
これまでは、生きている間に相続人に先に渡しておこうということをしても、過去にさかのぼってすべての先渡し贈与が相続のときの遺留分減殺請求の対象でしたが、10年に限定されたことにより、さきにもらった相続人の安定性がはかれますね。
<大阪相続遺言相談センタースタッフのつぶやき>
遺留分の訴訟がこれで減るのだろうな、というのが率直な感想です。
しかしながら、遺言で不動産をもらった相続人が、実は不動産よりも現金のほうが欲しいと思っていたのに、、、とうケースも多いです。
不動産よりも老後や当面の生活資金のほうがほしいという声もよく聞きますから。
やはり、遺言書を残すときは、どう残せばいいのか悩むことには変わりありませんし、そのときはセンターに相談してくださいね。
自分で悩むよりもプロに解決してもらいましょう。
では、次回もお楽しみに。
この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。