民法(相続法)改正(2018年7月6日成立)について8 ~配偶者居住権ができた!前半~
目次
大阪相続遺言相談センターです。
このシリーズでは、2019年から2020年にかけておこなわれる相続にまつわる民法改正や新制度創設について順に説明しています。
(これまでのスタッフ日記をご覧ください)
今回は、4つ目の「配偶者居住権」のうち短期ではないほうの権利についてお伝えします。
令和2年4月1日に施行される制度です。(この日前に発生した相続については対象となりませんのでご注意ください)
前回のスタッフ日記で書きました「短期」の配偶者居住権と同じ時期での施行です。
少し先の話ですが、テレビや雑誌などで取り上げられていることもあり、最近の相談者からの改正についての質問として聞かれることが多く、みなさんの興味のある内容です。要チェックですよ。
<改正された点④>
この民法改正で変わることの4点目は「配偶者の居住権を保護するための配偶者居住権の新設」であり、この制度には大きく分けて2種類あることは前回述べました。
2種類目は「配偶者居住権」といい、新民法第5編第8章第1節に新たに加えられました。
今回は短期ではないほうの居住権について説明しますね。新民法1028条から1036条です。
「配偶者居住権」とは、不動産の所有者であり居住者であった人(被相続人)が死亡(相続開始)した場合で、そのときに相続人となる配偶者(妻や夫)が、その不動産に居住していた場合にその不動産について原則として終身、つまり配偶者は死ぬまで継続して無償で使用することができるという権利のことをいいます。
被相続人が死亡したあとの相続人全員の遺産分割(つまり遺産の取得方法の話し合い)のときや、被相続人が生前遺言で指定して、配偶者にこの「配偶者居住権」を取得させることができるのです。
ここまで文章で説明してもいまいち・・・・・わかりにくいことでしょう。
実例を挙げて説明しますね。
例えば、Aさん、妻Bさん、二人の間の子である長男Cさんという家族がいたとします。
Cさんが独立して家庭をもったあと、AさんとBさんとは、若い時にAさん名義で購入した自宅に2人で仲良く長きにわたり一緒に暮らしてきましたがAさんが大病を患い令和2年5月1日に死亡しましたと仮定します。
Aさんは、自分に万一のことがあった場合は、この自宅の土地建物の名義は一人っ子のCさんにしてほしいと生前からBさんとCさんに伝えていましたが、遺言はのこしていませんでした。
この自宅の価値は2,000万円であるとします。
Aさんの他の財産には預貯金3,000万円がありました。合計で5,000万円ですね。
そこで、BさんとCさんとは、法律上の相続分は2分の1ずつで、遺産分割協議という話合いをすることにしました。
金額にするとBさんとCさんとは2500万円ずつのものがもらえたらいいですね。
もしここで、Bさんのその後の住む場所確保のために、自宅をBさんの名義にすることを重視したとします。
すると、Bさんは自宅2000万円と預貯金500万円をもらい、Cさんが預貯金2500万円をもらうことにすれば、法律上の相続分とおりになります。
でも、そうすると、Bさんは高齢で仕事についていません。
預金はほとんどが亡くなったAさん名義のものです。
Bさん名義の預金は少ししかありません。
妻として今まで夫を支えてきて、二人で作り上げた財産で買った家に住めるのはよしとしても、預金500万円では老後の資金が不安です。
そこで、「配偶者居住権」という権利が創設されたのです。
この権利を使えば
2000万円の評価の自宅を1000万円の負担付き所有権と、1000万円の配偶者居住権とで構成されるものとでき、
Bさんは 自宅のうちの配偶者居住権1000万円と預貯金1500万円を取得
Cさんは 自宅のうちの負担付き所有権1000万円と預貯金1500万円を取得する
という話し合いのもと遺産分けができるのです。
高齢のBさんにとっては手元の現金が増えるため、老後資金への不安が和らぎますね。
なお、この「配偶者居住権」は登記しなければなりませんのでご注意を。
この権利の計算方法などは複雑であり、登記も必要となります。この権利を使う場合は、専門家に相談したほうがいいですね。
<大阪相続遺言相談センタースタッフのつぶやき>
このように法律で決めてくれたけれども、短期の配偶者居住権と同じく、内縁や事実婚の配偶者や、同性婚の配偶者には認められないというのも不十分だなあというのがセンタースタッフの率直な意見です。
シニア再婚、子連れ再婚が珍しくなくなった現代において、のこされた高齢の配偶者の居住権を守るための制度ではありますが、やはり、遺言書を残しておく必要性は変わらず、わたしたち専門家の出番はまだまだありますね。
法改正は常に勉強し、みなさまのお役に立てればと存じますので、ぜひとも大阪相続遺言相談センター(運営:P.I.P総合事務所)の無料相談を利用くださいね。
では次回は、配偶者に生前贈与していた自宅不動産の持ち戻しの改正について書きますね。お楽しみに。
この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。