民法(相続法)改正(2018年7月6日成立)について10 ~葬儀費用を立て替えた場合など、先に仮で払い出しができる制度ができた!~
大阪相続遺言相談センターです。
このシリーズでは、2019年から2020年にかけておこなわれる相続にまつわる民法改正や新制度創設について順に説明しています。(これまでのスタッフ日記をご覧ください)
今回は、6つ目の「相続預貯金の仮払い制度の新設」についてお伝えします。
令和元年7月1日に施行される制度です。(この日前に発生した相続については対象となりませんのでご注意ください)
相続人が良かれと思い葬儀費用を立て替えた場合に、一定の金額ですが、亡くなった人(被相続人)の預貯金が凍結されても引き出しができるようになりました。
<改正された点⑥>
この民法改正で変わることの6点目は、預貯金の仮払い制度ができたことです。改正民法909条の2が新設されました。
具体例で説明しますね。
例えば、Aさん、妻Bさん、二人の間の子である長男Cさんという家族がいたとします。
Aさんが令和元年7月1日に死亡しました。
AさんのメインバンクであるD銀行には普通預金に600万円、定期預金に300万円の預金がありましたが、Aさんが死亡したことを銀行に伝えました。
すると銀行はその預貯金は遺産分割協議が整うまで、または、遺言書どおりの相続手続きがおこなわれるまで引き出しできないようにします。
これを一般的には預金が凍結されるという言い方をしますね。
それが今回の改正により、各相続人は遺産である預貯金のうち、金融機関に対し、上限があるものの、特定の相続人が 単独での預貯金の払い戻しを受けることができるようにしました。
※金融機関から単独で払い戻しを受けることができる金額
相続開始時における金融機関の預貯金の金額 × 1/3 × 金融機関からの払い戻しを行う相続人の法定相続分
具体的には、相続人のCさんが、Aさんの葬儀費用のため遺産分割前にAさんのD銀行の口座から仮で引き出せる金額は
300×3分の1×2分の1=50万円
600×3分の1×2分の1=100万円 の 合計150万円 です。
各金融機関ごとに上限を150万円として、同じように仮払い請求できるのですが、同一金融機関の口座が複数ある場合は、合算されますのでご注意ください。
では次回は 遺産分割前の相続財産の処分をした相続人に対しての取り扱いの改正について書きますね。お楽しみに。
この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。