今年大きく動く!所有者不明土地問題について⑤~「所有者不明土地管理命令」という規律について最新の動き!
大阪相続遺言相談センターです。
トップファンのみなさま、まあまあそれなりにファンでいてくださるみなさま、いかがお過ごしでしょうか。
新年度の新たな生活には慣れましたか?
「蔓延防止等重点措置」(注1)が発令され、新型コロナウイルス感染拡大を阻止すべく、
大阪相続遺言相談センター(運営:P.I.P総合事務所)のスタッフは、朝礼で勤務外でも社会人としての自覚を忘れず行動するようにと申し合わせました。※注1 引用元「実用日本語表現辞典より」
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延を防止するため、必要に応じて政府が自治体に発令する、各種対策の要請や命令。
2021年2月、新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律の施行に伴い新設された制度のことをいう。
従来の特別措置法の下では、緊急事態宣言が発令された状況下においてのみ、しかも基本的に都道府県ごとに、
飲食店の営業時間の短縮要請などが可能とされていた。
「まん延防止等重点措置」の下では、緊急事態宣言が出されていなくても(平時でも)時短要請が可能となり、
かつ都道府県下の市区町村に地域を限定して対策を要請できるようになった。
ところで、今回で5回目である「所有者不明土地問題」シリーズを進めてまいります。
第4回目の前回は、不動産の所有権を放棄できるのかどうか?および最新の法改正の動きについてお伝えしましたね。
第5回目の今回は所有者不明土地問題解決への新しい動きのうち「所有者不明土地管理命令」と「所有者不明建物管理命令」についてお伝えします。
いったいどういうことでしょうか?
所有者不明土地を管理する人を決めてもらうよう裁判所へ申し立てすることができるようになる
前回のスタッフ日記でもお伝えしましたが、法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議(令和3年2月2日開催)で、
ようやく「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案がだされました。
(引用:法務省ホームページ法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議(令和3年2月2日開催) (moj.go.jp))
ここに新たに提案されている規律が「所有者不明土地管理命令」「所有者不明建物管理命令」というものです。
※以下は上記の会議で決議された要綱案から抜粋して引用
なお、本日記の執筆時(令和3年4月9日)にはまだ民法改正されておりませんのでご注意ください。
所有者不明土地管理命令・所有者不明土地管理人とは
裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない 土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができ ず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、
必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持 分を対象として、
所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分(所有者不明土地管理命令)をすることができる。
どのようなもの?
所有者不明土地が増える原因がどうであれ、所有者不明土地をそのままほったらかしにしておけないという関係者がいた場合に、
「この土地の所有者がわからないけれど、なんとか話をしなければならないなあ」と思ったとします。
その際に、裁判所へ申し立てをして「所有者不明土地管理人」を選任してもらうことができるようになる規定です。
想定される「関係者」は何かしらの利害がないといけません。要綱案では「利害関係人」として指定されていますね。
利害関係人とは?
どのような立場の人が利害関係人になるのでしょうか。
たとえば、次のような人が考えられます。
・その土地が適切に管理されないために不利益を被るおそれがある隣接地の所有者
・一部の共有者が不明な場合の他の共有者
・その土地を取得してより適切な管理を使用とする公共事業の実施者
・その土地を買い取りたいと希望する業者や個人
・その土地を時効取得したと主張する人
なお、「所有者不明土地管理人」だけではなく「所有者不明建物管理人」の制度もほぼ同じ内容で要綱案として出されています。
所有者不明土地管理人の権限は?
その土地の管理処分だけではなく、その土地上にある動産類の管理処分権限もあるようです
所有者不明土地管理人の義務は?
善良な管理者の注意義務(注2)が必要ということであり、相当きちんと管理しなければならないようです。
※注2 善良な管理者の注意義務とは(引用:コトバンクより)
業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のこと。
注意義務を怠り、履行遅滞・不完全履行・履行不能などに至る場合は民法上過失があると見なされ、状況に応じて損害賠償や契約解除などが可能となる。
これは委任契約を受けた人の注意義務と同じくらいなので、職業人としてレベルの高い注意義務であり、
ちょっとミスしたら損害を補填しなければならないのではないかと考えられます。
よってこの管理人に選任されるのは弁護士などの法律専門家ではないかと考えられます。
ワタシのつぶやき
新しい制度ができて所有者不明土地を管理する専門家を決めるという画期的なものですが、
一般的にここまでするケース、つまり裁判所に申し立てをするケースはどれくらい見込めるのだろうか?と思います。
この規律だけではなく、前回のスタッフ日記でお伝えしました「土地所有権の放棄制度」との兼ね合いもきになります。
土地を共有で持っている場合は、そのうちの誰かが不明ではないのでしたら、所有権放棄制度を使い不明者に放棄させるほうを活用してください、
それも使えなければ裁判所で選任した専門家が管理してあとは公共のためにいいようにしちゃいますよという強硬手段なのですね。
要綱案のとおりに民法改正されるまでどれくらいかかるのでしょうか。見守っていきたいと思います。
この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。