遺言は認知症の方が書くと無効になる?
遺言とは何か?
遺言は、人が亡くなった後に自分の財産をどのように分配するかを決めておく大切な文書です。
遺言を作るメリット
遺言を作ることで、次のようなメリットがあります:
- -相続人同士のトラブルを防ぐことができる
- -自分の思い通りに財産を分けることができる
- -相続手続きをスムーズに進めることができる
認知症と遺言の関係
認知症になると、物事を正しく判断する能力が低下していきます。
そのため、認知症の人が書いた遺言が有効かどうかが問題になることがあります。
遺言能力とは
遺言を書くためには、「遺言能力」が必要です。
遺言能力とは、次のようなことができる能力のことです:
- -遺言の内容を理解できる
- -自分の財産がどのくらいあるかわかる
- -誰に財産を渡すかを決められる
- -遺言を書くとどうなるかわかる
認知症の人の遺言は無効?
認知症だからといって、必ずしも遺言が無効になるわけではありません。
認知症の程度によって、遺言能力があるかどうかが判断されます。
- 軽度の認知症:遺言能力がある可能性が高い
- 重度の認知症:遺言能力がないと判断される可能性が高い
認知症に備えた遺言対策
認知症になる前に遺言を準備しておくことが大切です。以下のような対策を考えましょう。
早めの遺言作成
認知症の症状が出る前、または軽いうちに遺言を作成しておくことをおすすめします。
元気なうちに遺言を用意しておけば、後々のトラブルを防ぐことができます。
公正証書遺言の活用
遺言には様々な種類がありますが、特に「公正証書遺言」がおすすめです。
公正証書遺言には次のような特徴があります:
- -公証人(法律の専門家)が関わって作成する
- -遺言能力があったことを証明しやすい
- -遺言書の保管が確実
- -偽造や変造のリスクが低い
医師の診断書を添付
遺言を作成するときに、医師の診断書を一緒に用意しておくと良いでしょう。
診断書には次のような内容を記載してもらいます:
- -遺言を作成した時点での判断能力
- -認知症の有無や程度
- -遺言能力があるかどうかの医学的見解
これにより、後で遺言の有効性が疑われたときに、遺言能力があったことを証明しやすくなります。
認知症の人が遺言を書く場合の注意点
すでに認知症と診断されている人が遺言を書く場合は、特に慎重に進める必要があります。以下のような点に注意しましょう。
専門家への相談
認知症の人の遺言作成は複雑な問題を含むため、必ず専門家に相談しましょう。
相談できる専門家には次のような人がいます:
- 司法書士/行政書士:遺言書の作成や手続きをサポートできる
- 弁護士:法律面でのアドバイスができる
- 公証人:公正証書遺言の作成ができる
特に司法書士/行政書士はほとんどの相続手続きをサポートできるため、最もおすすめです。
遺言能力の確認
認知症の人が遺言を書く場合、その時点での遺言能力を慎重に確認する必要があります。
以下のような方法で確認できます:
- -医師による診断:認知機能や判断能力の評価
- -公証人による面談:遺言の内容理解度の確認
- -家族や親族の立ち会い:普段の様子との比較
定期的な見直し
認知症は進行性の病気なので、症状が変化していく可能性があります。そのため、遺言の内容を定期的に見直すことが大切です。
以下のようなタイミングで見直しを検討しましょう:
- -定期的な間隔(例:1年ごと)
- -認知症の症状に変化があったとき
- -家族構成や財産状況に変化があったとき
遺言が無効になるリスクと対策
認知症の人の遺言は、無効になるリスクが高くなります。
以下のような対策を考えましょう。
無効になるリスク
- 遺言能力がないと判断される
- 遺言の内容が不自然または不合理
- 他人の影響を強く受けている
リスク対策
- 早めの遺言作成:認知症が進行する前に準備
- 公正証書遺言の利用:専門家のチェックを受ける
- 医師の診断書添付:遺言能力の証明
- 家族への説明:遺言の意図を理解してもらう
- 定期的な見直し:状況の変化に対応
まとめ
認知症と遺言の問題は複雑ですが、早めの準備と適切な対策で多くのリスクを軽減できます。大切なのは次の3点です:
- -できるだけ早く遺言を準備する
- -専門家(弁護士、司法書士、公証人など)に相談する
- -定期的に遺言の内容を見直す
これらの点に注意して遺言を準備すれば、認知症になっても自分の意思を尊重した財産分配ができる可能性が高くなります。認知症の不安がある場合は、早めに行動を起こすことをおすすめします。
この記事を監修した行政書士
P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。